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餅つきに子ども食堂、税務相談まで まちの縁側としてのシェアオフィス、清水荘

餅つきに子ども食堂、税務相談まで まちの縁側としてのシェアオフィス、清水荘

コーヒーを飲みに来たつもりが、いつのまにか税務相談や餅つき大会の話題に。千駄木の清水荘は、働く場所とまちの人々をつなぐ“縁側”のような存在。

築50年のアパートと築100年の一軒家を改装したシェアオフィスを拠点に、多様な立場の人たちの交流が生まれていく。

1階のカフェ店主・佐藤さんとのおしゃべりをきっかけに、清水荘の仕組みを探り、その日常をのぞいてみた。

目指したのは社会関係資本をつなぐ場づくり

谷根千界隈に住んでいた頃、時間ができればふらりと家の周りを歩き、個人店が多いこのまちの開拓を楽しんでいた私だが、引越してからは、すっかり足が遠のいてしまっていた。

久しぶりに歩いてみると、あの頃の記憶のまま、ということはなく、思いがけない発見もあれば、見慣れた風景の変化に戸惑いを感じる瞬間もあった。

そんな折、地元の方から千駄木に「清水荘」という場所があると聞いた。地域の活動と関わりながら運営されているシェアオフィスと知り、興味を惹かれ行ってみることにした。

平日の午前中、少し緊張しながら清水荘に向かうと、1階にあるカフェ「Tavie Coffee Roaster Engawa Stand」の窓辺に立つ佐藤さんが優しく迎え入れてくれた。

清水荘は、2024年4月、築50年のアパートと築100年の一軒家を改装し、オープンしたシェアオフィス。千駄木に先祖代々暮らす家系に生まれたオーナーの、「お世話になった場所である千駄木に根ざしながら、地元と繋がりをもって、今の時代らしくできることはないものか」という想いからプロジェクトが始まった。

オーナーと、事業デザインを担当したソーシャルデザインパートナーズ株式会社、設計デザインを手掛けた合同会社MINEを中心に議論を重ねる中で「利益ではなく、地域の社会関係資本をつなぐ場をつくるべき」という結論に至り、「地域で繋がるシェアオフィス」というコンセプトが生まれた。

入居条件は“まちと関わること”  円卓会議による共同経営

清水荘は、入居者の選定から一味違う。条件のひとつは「地域に関わる意志」であり、まちの活動に時間を割ける人が歓迎される。オーナーと近所の居酒屋に飲みに行き、お互いの想いを理解しあってから入居が決定したケースもあった。

現在入居しているのは、ホテルや公共施設などのデザイン・ブランディングを行っていて清水荘の設計デザインも担当した合同会社MINE、マインクラフトを活用した教育プログラムを提供する株式会社コアース(NPO法人デジタルものづくり協議会)、地元密着のチャレンジとして千駄木を選んだボディトリートメントサロン「HELLOBEAUTY」、祭文化を伝え地域の担い手向けサポートに取り組む一般社団法人マツリズム。

最大の特徴は、オーナーと入居者が任意団体「円卓会議」を立ち上げ、上下関係でなく横並びになり、地域密着事業の展開に向けた意思決定を重ねていることだ。月1回程度行われている会議には、基本的にオーナーと入居者のみが参加しているが、ときには地域住民も参加し、ともに清水荘の活用方法を話し合うこともある。

また、入居者を通じて清水荘の思想や取り組みに共感した外部の人も「フェロー」として認定し、施設を開放している。

シェアオフィス棟にはレンタルスペース「貸しスペース 清水荘 はなれ」が隣接しており、「円卓会議」、「フェロー制度」によって、清水荘を「地域の縁側」のように解放していきながら、商店街や町会など地域との連携を深めていくことが目指されている。

コーヒーと一緒に近況もどうぞ。

「こんにちは」「暑いですね」。

冒頭、私を招き入れてくれた時のように、カフェの窓から外を通りかかる人に店主の佐藤さんはやわらかな口調で声をかける。短いやりとりの中に、顔なじみも初めての来訪者もいることがわかる。こじんまりとした店内、小さくて居心地のよいソファに座りコーヒーとお菓子を口に運んでいると、佐藤さんの人柄も相まって会話が弾むのも頷ける。

こうして会話はやがて雑談から相談へ、相談は清水荘と連携した活動のアイディアへと広がっていくこともしばしばあるそう。

佐藤さんはアパレル業界で働く傍ら、焙煎技術を学び、杉並区にコーヒーショップ出店が決まった直後に、清水荘の中心人物から声をかけられ、ここに関わるようになった。今後は千駄木の店舗のみの営業が決まっているが、開店から2年弱の間、南阿佐ヶ谷と千駄木を行き来し、曜日を分けて営業していた。

二拠点生活は大変そうだが、
「祭りに参加するよう勧められたときも、最初は迷ったんですけど、町会の方に『もう名前を入れておいたから!』と言われて。半纏を持っていないことを伝えると、ご近所に住む僕と同じ苗字の佐藤さんが、刺繍入りの半纏を貸してくれることになりました。代々受け継がれてきたものらしく、着ると歴史の重みが感じられ、ありがたい気持ちになりました」
と佐藤さんは嬉しそうに笑う。

岐阜県出身で11人兄弟の末っ子として育った佐藤さん。この日もご近所さんからおすそ分けしてもらったという大きな桃を見せてくれた

そんな体験を経て、佐藤さんはこのまちに自然と溶け込んでいった。店に立つ彼の姿は、単なるカフェ店主ではなく、訪れる人の声と清水荘をつなぐ“縁側”そのもののように思える。

つぎつぎと生まれる企画実現のカギはご近所とのネットワーク

レンタルスペース「はなれ」では、これまでにもさまざまなイベントが開催されてきた。

根津神社例大祭の御旅所になった日と同時に開催された流しそうめんは、子どもから大人まで夢中になった。子ども食堂になる日もあれば、税理士が来て、税務相談会が開催されたことも。

町会が主催する誰でも参加できる朝の清掃活動イベントの拠点にもなっていて、夏には終了後にかき氷のおふるまいが行われ、地域住民同士の交流に一役買った。

清水荘がオープンして初めての冬、佐藤さんが「餅つきをやりたい」と相談すると、ご近所さんが“餅つきのレジェンド”を紹介してくれたという。カンパ制で運営し子どもには無料でふるまわれ、当日は約180人が列をなした。

こちらは2025年12月に行われた餅つき大会の様子。千駄木二丁目西町会、汐見小PTAも協力し開催され大いににぎわった

イベントのアイディアは円卓会議に持ち寄られることもあれば、カフェでのお客さんからの会話から広がることもある。計画的というより、偶然と人のつながりにより生まれることの方が多いのかもしれない。

清水荘がオープンしてから1年強のうちに多くの催し物が開催されていることに驚くが、
「今は地域の方が企画を持ち込み、主体的に運営してくださることが多くなっているんです。今後は、僕たちは後ろから見守る立場となっていければいいね、と清水荘メンバー内でも話しています」
と佐藤さん。

まちと人が自然に交わる、これからの拠点

清水荘のデザインを担当し、自らその1室に入居しているMINE代表の三浦さんは、構想当時を振り返りこう話してくれた。
「これまで大手企業のオフィスデザインをしてきた一方、ごく小さい単位での地域と繋がる働く場づくりの必要性についても考えてきました。日中の清水荘には近所に住む親子やご年配の方が訪れることが多いですが、夜のイベントには若い人や仕事帰りの人なども訪れる。よく、なにをやっている場所なのかわからないと言われますが、そこがおもしろいところだと思っています」。

私が近所に住んでいた頃には清水荘はまだ無かったので、今回初めて訪れることになったのだが、それにも関わらず、不思議とすぐに帰ってきたくなる場所になっていた。それは、「地域で繋がるシェアオフィス」というコンセプトとそれを体現した空間、さらにはシェアオフィスの入居者、そしてそこに通う人たちの人柄によりつくられていると感じる。

小学校の帰りに佐藤さんのお店に寄り道する子どもや、催し物の情報が貼られた掲示板を見ていると、ここがシェアオフィスの一角ということを忘れそうになる。

清水荘には、シェアオフィスの入居者、近隣住民、イベントを目当てに初めて訪問する人をはじめ、様々な人が訪れる。このまちに、今よりもう少し深く関わってみたいと思っている人は、まずはコーヒーを一杯飲みに行ってみてはいかがだろうか(コーヒーのほか、佐藤さんがセレクトしたお菓子も並んでいる)。

「子どもを連れて来れるところも気に入っています」と入居者の株式会社コアース土井さん。この日は休日だったが、夏休みの宿題に取り組むためにお子さんと一緒に来たそう

※カフェの営業日はイベントにより変わることもあるため、事前にInstagramを確認することをおすすめします。

清水荘/Tavie Coffee Roaster Engawa Stand
〒113-0022 東京都文京区千駄木2-10-17
HP:https://shimizu-so.studio.site/
Instagram:
 清水荘 https://www.instagram.com/shimizuso.sendagi?igsh=MXZzN2Jic3cxbXZm
 Tavie Coffee Roaster Engawa Stand https://www.instagram.com/coffeetavie?igsh=bXFsM2pjdjg3dGdn

清水荘メンバー: 
 一般社団法人マツリズム 大原 学さん(103号室コワーキング利用)/
 
(2026/08/23時点)

この記事を書いた人ライター一覧

Yukiko Sasaki

元谷根千ご近所の住人

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