年間をとおして、たくさんのお祭りが行われる谷根千エリア。2025年8月14日、ここに新しいお祭りが誕生した。その名も「ごちゃまぜまつり」。5歳から小学6年生の10人の子ども達が主体となり、祭りの企画から運営までを行いました。一般社団法人マツリズムが主催し、祭りの企画・実施を5歳から小学6年生の10人の子ども達が主体となって行った。今回は、そのワークショップの模様をレポートします!
お盆の入りの8月13日、13時。
千駄木駅から歩いて5分ほどの場所にある古民家をリノベーションしたシェアオフィス「清水荘」。落ち着いた住宅街にあるこの場所が、この日は子どもたちで賑わいを見せていた。
この日に集まったのは10人の子どもたち。通う学校や園も異なる5歳から11歳の子どもたちの共通点は「お祭りが好き」ということ。
彼らはこの3日間で自分たちの“願い”を込めたオリジナルの「お祭り」をつくる。周りにいる大人たちは手伝うけれど、主体となるのは子どもたち自身。
1日目にお祭りを学び、企画をする。2日目にお祭りの準備と開催、最終日は振り返りを行うというプログラムだ。
主催は、一般社団法人マツリズム代表大原さんと、ワークショップデザイナー杉山さん。大原さんは、これまで「おまつり先生」として全国の幼稚園・小学校・学童などでお祭りに関する出前授業などを行ってきた。今回は杉山さんとタッグを組み、3日間のワークショップとして初の開催となる。
果たしてどんなお祭りができるのか? 子どもたちも、主催するふたりも期待に胸を膨らませながら、3日間のワークショップがはじまった。

【1日目】そもそもお祭りってなんだろう?
まずはみんなで自己紹介。「お祭りが好き」と言う子どもたちに自己紹介では「お祭りのどんなところが好きか」を尋ねると「楽しいから好き」「たくさん屋台があるところ」「踊りが好き」など様々な声があがる。
オリジナルのお祭りを考える前に、お祭りについてのレクチャーを、これまで全国のお祭りに参加してきた大原さんがクイズや映像を交えながら行う。

「ヨーカイタ!」「サーイサーイ!サイ!サイ!」といった個性的なかけ声を実際に言ったり、お祭りの映像を見て服装や山車などの様子を見たりと、個性豊かな日本の祭りへの理解を深める。最初は緊張していた子どもたちの表情も少しづつほぐれていく。
そして大原さんから子どもたちに「そもそもお祭りってなんだと思う?」と問いが投げかけられた。
子どもたちからは「みんなで楽しむもの」「神さまを喜ばせるもの」「何かを祀るもの」との返事や、お祭りの起源である「天の岩戸」の伝説を話す子も。みんなよく知っている。
大原さんは「お祭りは、願うことではじまり、祝うことで続いていくもの」と説明した。例として挙げたのは「誕生日会」。
大原さん:「この人が生まれてよかったな。この人が健康に過ごせますようにという願いがあって、今年も1年健康で過ごせたことを祝う誕生日会が開かれる。お祭りも似ていて、願う気持ちを忘れないように毎年同じ時期に祝う。お囃子や踊りはその祝いを盛り上げるものなんだ」
有名な京都・祇園祭は「疫病を鎮める」、清水荘の近くの根津神社例大祭は「地域社会の安定」「商売繁盛」の願いが込められ、その地域の人たちにとっては大事な行事となっている。
もう1つ、祭りで重要なことと大原さんが話すのが「一体感」。多くの人が参加するお祭りでは、様々な人たちがその背景を超えて、つながりが芽生える瞬間がある。この一体感も祭りの醍醐味のひとつ。
一体感を体感するために、椅子に座る大原さんをただ持ち上げるのと、円陣を組んだ後に持ち上げるのとでは変化があるのかを実験してみる。
最初、成人男性の大原さんを4人の子どもたちだけで持ち上げようと試みるも、全く動かない。次に円陣を組み、「いくぞ!」「おおー!!」のかけ声の後に試すと、ほんの少しだけれど持ち上がった。
みんなで1つのことに取り組むと、楽しさとともに大きな力を発揮できる。

ぼくらの祭りを考えよう
1日目の活動は、ここからさらに明日につくるお祭りの企画を練っていく。「どんなお祭りにしたいか?」を3、4人のグループで話す。
「おもしろいのがいいなぁ」「賑やかにしたい」「人がたくさん来てくれる!」「屋台がほしいな」「楽しいお祭りにしたい」と各グループから声があがる。
「いいね、いいね。お祭りには人の願いが込められているって話を前にしたけれど、みんながつくるお祭りにはどんな願いを込めたい?」と杉山さん。

「来てくれたお客さんが楽しい」「地域がワクワクする」との意見にほかのみんなも賛成。
「じゃあ、そんなみんなの声を叶えるお祭りってどんな名前になるんだろう?」と杉山さんが投げかける。
「ワクドキ祭り!お化け屋敷とかハロウィンとかそういうのもあっていいかな」
「もりあがる祭り!そこには『遊ぶの大好き神さま』がいるの」
「ごちゃまぜ祭りだったら、いろんなものを含められそう」
と子どもたちからさまざまな案があがる。で揃ったところで、1番いいと思ったものに挙手をする。
すると「ごちゃまぜ祭り」と「ワクドキ祭り」に分かれた。そして話し合いの末、お祭りの名前は「ごちゃまぜ祭り」、神さまの名前を「遊ぶの大好き神さま ワクドキ」にしようと決まった。自分の意見を持ったり、「じゃあこれならどう?」とみんなにとってのいい形を考える子どもたちの姿にグッときた。

じゃあ実際に何をするかを決めていく。この日のワークをしたスペース含め3フロアをお祭りの会場として使うことができる。どんなことをするか、誰が何を担当するかまでを、なんとか時間内に決め切ることができた。
今日のプログラムをなんとかやり切った子どもたち。明日、何を持ってこようとか帰りに買い出しに行こうとか疲れとともにワクワクした様子でこの日は帰って行く。
【2日目】準備もにぎやか
お祭りの会場となる「清水荘」。2階スペースでお化け屋敷、ワークをした部屋で射的とスーパーボール掬い、入り口に近い部屋ではお神輿、神様の絵とくじ引きという配置に決まった。色々あって楽しそう。
この日は10時から12時に準備、1時間のお昼休憩をはさみ、13時から14時にリハーサル、14時から15時半がお祭りの本番。盛りだくさんなお祭りのコンテンツをつくりきれるかは、最初の準備の時間次第。

大人たちは極力手を出さないようにしつつも、のんびりと進行するチームに手の空いている子を呼んだり、大きなものをつくる際に押さえたり切ったりといったところを手伝う。
お化け屋敷は入る人を驚かせるための装飾が凝っていて、射的やスーパーボール掬い、くじ引きは100均などで買ったものを取り入れつつどんなルールで遊ぶかをよく考えられていた。
こんな短時間でも形になることに感心しつつ、大事なものがまだできていない。それは、お神輿と神さまの絵。
実は昨日時点では、この2つをつくるかは怪しかった。ほかのお化け屋敷や射的をつくる方が人気があり、女の子1人でこの2つを担当することになっていた。時間的にも、モチベーション的にもどうかなぁとの大人たちの心配を他所に、この日来た彼女は「お神輿つくりたい!」と、せっせとつくっていた。
段ボール箱、風船に、絵と葉っぱも飾り、子どもたちで担げる神輿が形になった。

「遊ぶの大好き神さま ワクドキ」もほかの子と協力して描きあげ、とてもキュートな神さまが誕生。「ごちゃまぜまつり」の幕や提灯といった飾りもつくられて、お祭りの雰囲気も出来上がってきた。
お昼ご飯を食べ、英気を養い、リハーサルで最終調整をしたら、いよいよ本番!

エッサ!ホイサ!!ぼくらの「ごちゃまぜまつり」
お祭りがはじまる頃には、参加する子どもたちの親御さん、友達、さらに近所の方の姿もあり、会場はさらに盛り上がる。お揃いの法被と鉢巻を身につけ準備万端。
ごちゃまぜ祭りのはじまり!子どもたちはお客さんにあいさつし、呼びかけたり、自分の担当場所で遊び方やつくったものを説明をしたり。法被姿の子どもたちがなんとも凛々しい。



子どもたちが本気で脅かしにくる
14:30と15:00には、お神輿を担いで千駄木のまちを練り歩く。
さて、お祭りで大事なのは「一体感」。お化け屋敷や射的といった楽しいものはつくれたけれど、それら全部が集まるひとつの「お祭り」であるためには欠かせないこと。そのため、お神輿を担ぐ前はみんなで円陣を組む。一体感も気合いも十分。

かけ声は、子どもたちが気に入った「エッサ、ホイサ!」。
「エッサ、ホイサ!」「エッサ、ホイサ!」と元気な声とお神輿がまちのなかを進む。

変わる変わる子どもたちが担ぎ、無事に2回の渡御を終え、清水荘に戻って来た。一緒に神輿を担いだことによっても、子どもたちの一体感は増したように思う。
1時間半はあっという間に過ぎ、「ごちゃまぜまつり」は無事に終了。
「お神輿は、みんな元気がよくて、明るい気持ちになれた!ありがとう」
「子どもたちの工夫と楽しい発送がつまったステキなお祭りでした」
「射的が楽しかった」
「お化け屋敷、びっくりドキドキでした〜!」
などお客さんからの感想コーナーにもいろんな声が寄せられた。子どもたちのワクワク、ドキドキはお客さんにしっかり伝わっていたよう。
最後はみんなで記念撮影。みんなで担いだお神輿と「ワクドキ」さまも一緒に。

【3日目】ぼくらの祭りの振り返り
祭りを開催して終わりとせず、振り返りまでがこのワークショップ。2日間の写真を見返し、感想シートに言葉と写真でまとめていく。
ある子は、「紙芝居みたいにまとめたい!」とシート以外にも画用紙に絵を描き、写真を貼りはじめた。もう1人も思いついたようで写真と短いコメントでこの2日間をまとめていく。最後までこだわってつくる様子がなんだかうれしい。
それぞれのまとめがひと段落ついたところで、みんなで気づきや感想をシェアする。
「お化け屋敷で人を驚かすのを頑張った!驚かすのは楽しかった!」
「協力プレーで楽しめたのも良かったと思います。もし次があるのなら、射的ではなくお化け屋敷をやりたいです」
一人ひとりの発表が終わるごとに拍手で称え合う。紙芝居形式でまとめていたふたりの力作も完成し、披露してくれた。

大原さんも子どもたちに混じり感想をシェアする。
「今回のお祭りは一体感があったところがよかったです。年齢の差はあったけれど、それを超えてみんなでひとつのことに向かって頑張っていました。感想としては、楽しかった!子どもの力はすごい!祭りってすごい!」
年齢の幅が広く、下の子たちも最後までプログラムを完走できたことはすごいこと。それぞれの関わりがあってできた「ごちゃまぜまつり」だと改めて思う。
子どもたちにワークショップの最初に聞いた「お祭りのどんなところが好き?」と、「お祭りとは?」という問いが大原さんから子どもたちに投げかけられる。
「僕は最初の時と変わらず、屋台の射的でズドンと撃って、的が倒れて商品がゲットできる喜びが好きです。だから、祭りとは喜びかな」
「大人も子どもも楽しめるところ。大人だけが楽しめて、子どもが楽しめないものはお祭りとは言えない」
「祭りは参加するより、やるほうが楽しい!」
この3日間を経て、より実感のある言葉で話される子どもたちの言葉。そして最後に、子どもたちが授与式のBGMを歌う和やかな雰囲気のなか、ここまでやり切った子どもたちに大原さんから修了証書を授与する。

修了証書にはこんなことが書いてあった。
「あなたはこの3日間お祭りについて学び、仲間と協力して「ごちゃまぜまつり」を大成功におさめました。お祭りづくりのプロに任命します。これからも自分でつくる楽しさを忘れずに、周りの人やまちを元気にしていってください!」
(助成:文京区社会福祉協議会)




