
「都市のラス・メニーナス」について
2020年から「路上観察の現在地を探る」として、いろいろな方をお招きして、その方が見ているものの魅力、また、どうしてそういう視点に至ったかなどを、片手袋研究家の石井公二と編集者・都市鑑賞者の磯部祥行がお聞きしてきたトークイベント『都市のラス・メニーナス』。主としてYouTubeで配信してきた。「ラス・メニーナス」とは、17世紀にベラスケスによって描かれた、見る人によってさまざまな解釈を生じさせる絵画。街も、人によって、まったく異なる見え方をしているはずだ。

2025年6月より、東京の谷根千地域で建築・食・宿・アートなど、あらゆる方面で活動中のHAGISOが手掛ける谷根千地域のローカルメディア「まちまち眼鏡店」と組んで、新たな形で「都市のラス・メニーナス」を開催していく。その第4回が、日本給水塔党首・UCこと高水湧基さんによる『給水塔を10倍楽しく見る方法』と題して、JR西日暮里駅のベックスコーヒー内にあるエキラボniriで開催された。
『給水塔を10倍楽しく見る方法』

高水さんは、今年(2026年)の6月に『まちかど給水塔図鑑』を上梓。ほどなく重版がかかるほどの人気っぷりだ。すでに何度かトークイベントを開催しているので、今回は西日暮里のエキラボniriで開催する意義と、子どものころからファンすぎる阪神の優勝が今日決まるかという日にかけて、野球から話が始まった。イベントタイトルの「~10倍楽しく見る方法」は江本孟紀が1982年に刊行した野球を楽しむベストセラーにちなむ。

「都市のラス・メニーナス」は、路上観察の現在地を探すシリーズだ。路上観察といえば赤瀬川原平。しかし高水さんにとって、赤瀬川といえば兄の赤瀬川隼。野球を題材にした作品を多く発表している。その赤瀬川隼は団地住まいが非常に長く、複数の公団の団地を渡り歩いている。団地といえば給水塔。「赤瀬川隼が毎日見ていた(と思う)UR左近山団地のボックス型給水塔です」。野球と給水塔がつながった!
これを導入として、給水塔の分類などを話した後、新たな「路上観察の方法」が提案された。「接近度」だ。

給水塔を形ではなく距離感でカテゴライズする。工場など入れない敷地内になるもの。敷地内には入れるけれどフェンスで囲まれたりして触れないもの。触れるもの。そして内部に入れるもの。
「路上観察」として鑑賞されるものは、ヒューマンスケールのものが多い。給水塔は微妙で、団地くらいの高さではあるが、個人で所有することは不可能。そんな給水塔も、さまざまな事情で、遠望するしかないものから触れるものまである。これは、いろいろな鑑賞対象に当てはまるのではないか。
石井による片手袋研究は、自らに絶対に触らないことを課しているが、「見かけたら撮る」の唯一の例外が高速道路上の片手袋。これは触りたくても触れない。橋梁鑑賞を趣味とする磯部に質問が向けられた。多くの場合は触ることはできるが、それとは別の距離感がある。「渡る」だ。しかし、鉄道橋や水管橋は渡れない。
この「接近度」…いま思いついたのだけれど「タッチャビリティ」とでも言おうか、これはあらゆる対象で考えていたい観点だ。

有名漫画作品と給水塔の話や、給水塔に関する資料収集の楽しみの話を経て、エキラボniriから行ける給水塔を三つ紹介。そして給水塔だけでなく給水タンクなどについても高水山はその魅力を大いに語り続けた。
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時代や社会とともに変化し続ける「路上観察」にまつわるさまざまな方々のお話をこれからもうかがっていきます。
次回は「80年前後の谷根千の姿」についてのトークを企画中。お楽しみに!




