【イベントレポート】第9回 まちまち眼鏡の座談会
まちまち眼鏡の座談会
ゲストスピーカーの方々を迎え、フリートークを展開していただく「まちまち眼鏡の座談会」。「メンバーに直接会える場所をつくりたい」「メンバー同士の交流の機会があったら」「まちまち眼鏡のことをもっと知ってほしい」、そんな思いからスタートしたこのトークショーも今回で9回目となりました。今回は、通りすがるまちの方々にもご参加いただけるよう会場をJR西日暮里駅構内のスペース、エキラボniriへと移し、よりオープンなイベントとして開催しました。当日の模様を会場の写真とともにレポートしていきます。
第9回のゲストスピーカーはこの方々!
作曲家 西井夕紀子さん
料理研究家 井原裕美子さん
ジャーナリスト アレックス K.T. マーティンさん
最初のスピーカーは作曲家の西井さん
普段は作曲家として楽曲提供のお仕事をしている西井さんですが、そのかたわら、「まちの教室KLASS」(以下、KLASS)で「はなうたからつくる音楽会」(以下、「はなうた音楽会」)を開催しています。そんな西井さんからは、KLASSへの参加の経緯や「はなうた音楽会」の土台となった活動についてお話しいただきました。
西井さんの記事はこちら→https://machimegane.jp/author/nishiiyukiko/
西井さんとHAGISOとの繋がりは5年以上前にまでさかのぼり、KLASSについても企画段階からご存じだったそうです。西井さんご自身が「生活の中に自分でつくった音楽があったら、音楽の楽しみ方も生活も豊かになるんじゃないか」と考えていたことと、KLASSの「暮らしと学びを近づける」というコンセプトに共感してくださったことから、「はなうた音楽会」の開催に至りました。
今も毎月開催中の「はなうた音楽会」では、理論やハウツー重視でなく、みんなの反応を取り込みセッションしながら、参加者全員で”はなうた”を作曲しています。参加者が言葉を持ち寄って歌詞として組み立て、そこに西井さんが伴奏をつけて作曲していく。こうした過程を通じてみなさんに「音楽をつくる」ことへの思い込みを外してもらうことを目指しているそうです。
まちから生まれた音楽から”地域性”を感じてほしい
今回のトークでは、KLASSの「はなうた音楽会」の土台となったDear Someoneプロジェクト(https://nisiiukiko.wixsite.com/dearsomeone/home)という活動についても語ってくれました。この活動を通じて、現地の人々の感覚が反映された地域性を歌から感じられたらいいなという思いが大きくなり、「はなうた音楽会」へとつながったそうです。会場で、新潟県十日町市でのプロジェクトでつくられた楽曲が流れると、曲中のガソリンスタンドのおじさんによる「オーライ!オーライ!」のかけ声に雰囲気もほっこり、笑いが起きるシーンもありました。
今後のKLASSでは、まちまち眼鏡のエリア内ではなうたをつくったり、エリア内の「音マップ」をつくることにもチャレンジしたいと語ってくれました。そしてトークのシメは、西井さんが作曲した「食の郵便局TAYORI」のテーマソング。映像でTAYORIスタッフが合唱する様子が流れ、和やかな雰囲気のなかマイクは次のゲストへ。
次のトークは料理研究家の井原さん
井原さんは、食品メーカーでの商品開発・レシピ開発、保育園栄養士を経て、現在は「季節を楽しむ」をテーマに料理研究家をされています。食に関わり20年、HAGISOの立ち上げにも参加し初代店長も務めた方でもあります。ご自身の活動テーマに「季節を楽しむ」と据えたきっかけは出産だったそうで、働きながら子育てをしていたときに、ご自身も子どももなかなか季節を楽しむことができなかったという反省ともいうべき経験によるものなのだそうです。
井原さんの記事はこちら→https://machimegane.jp/author/ihara-yumiko/
そんな井原さんは、まちまち眼鏡店に「魅力的な商店街が豊かな食卓をつくる」という観点から寄稿してくださっています。これもご自身の「季節を楽しむ」という活動テーマから生まれたのだそう。というのも料理研究家の眼鏡を通して見ると、幅広い商品ラインナップを揃える大型スーパーに比べると、商店街の方がより季節を感じやすいのだとか。
季節の「美味しい」を親子で楽しんでもらいたい
後半では、KLASSで月に1回開催している親子向け料理教室「親子で楽しむ季節の手しごと」を紹介してくれました。この教室でも、料理を通して親子で季節を楽しんでもらいたいと「旬の食材とレシピをお届けしオンラインで一緒につくる」という内容にしているそう。旬のものを使ったり行事食をつくってもらうことで、親子で楽しめるようにと考えているのだそうです。教室での実際の調理の映像や、次々に出てくる料理の写真の数々に、会場からは「美味しそう~」の声も。親子はもちろん、おひとりでのご参加も大歓迎とのことですので、ぜひこちらをチェックしてみてくださいね。
KLASSでの料理教室に関してはこちら→https://klass.co.jp/event_tag/food/
最後のゲストはジャーナリストのアレックスさん
アレックスさんは、本業はジャーナリストの仕事をしていて、谷根千界隈にまつわる怪談を集めるという一風変わった趣味をお持ちの方。その趣味の発表の場として、まちまち眼鏡店で「谷根千怪談考」という寄稿をしてくださっています。今回のトークでは、実際に谷根千界隈で耳にした怪談を交えながら、怪談に興味を持ったきっかけや怪談を集める苦労、そして世の中になぜ怪談が生まれるのかといったことを話してくれました。
アレックスさんの記事はこちら→https://machimegane.jp/author/alex-kt/
お父さまがアメリカ人、お母さまが日本人という両親のもとに生まれ、アメリカ国籍ながらも人生の大半を日本で過ごしてきたアレックスさんは、13年ほど前に千駄木へ引っ越してきたそうです。何度か散歩中に訪れた谷中の雰囲気の良さに惹かれて引っ越し、それ以来千駄木に落ち着いたそうです。
記者として働いていましたが、怪談を追っていたというわけではなく、アレックスさん自身が不思議な経験や怪奇現象に巡り合ったことがないという「憧れ」から怪談に興味を持つようになったのだそう。谷根千は、その昔”まくらまち”であり、歴史が深く、多くのお寺や霊園があるなど、怪談の要素が揃っていたことから調べるようになったそうです。
怪談は悲惨な事件を浄化する物語?
この日も、上の記事の谷根千周辺の怪談をいくつか披露してくれましたが、アメリカ国籍を思わせない流暢で興味を引く語り口に、和やかだった空気は一変、恐怖の声やどよめきも起こっていました。その様子は、番頭の宮崎さんも「素晴らしい」と太鼓判を押すほど(笑)
とはいえ、実際に記事を書く際には骨が折れたそうです。というのも谷根千は、面積自体は狭くはないにもかかわらず、おそらく平屋が多く人口が少ないためか、最近は特に怪談がないのだとか。アレックスさんいわく、「怪談というものは、ある大きな事件が起きたときにそれを”浄化”させるために生まれる物語」なのだそうですが、そもそも近年の谷根千では大きな事件が起きていないため、怪談が少ないのだそう。記憶に新しい事件でいえば、約10年前に文京区の小学校で父子の無理心中があったそうですが、こうした事件も20、30年経ってようやく怪談になるのだとか。ジャーナリストらしい、とても合点のいく解釈に会場からは感嘆の声も。最後に「怪談にはなかなか巡り合えないし巡り合えない方がいいのですが、引き続き探していきます(笑)」と語り、ゲストトークは締めくくられました。