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日暮里駅のほど近く。暖簾をくぐれば、そこには時代に合わせて姿を変えながらも、変わらない温もりで人々を迎え入れるまちの湯どころがあります。今回の「まちゆきまかせ」は、斉藤湯の三代目・斉藤さんに、このまちの歴史と、歩き続けることの楽しさを伺いました。

(聞き手:まちまち眼鏡店  ふじ・すえ)

がちゃのカプセルが運んでくる、新しい出会い

すえ: 今回の「よりみちまっぷがちゃ」、斉藤湯さんでも反響があるとお聞きしました。

斉藤さん: ええ、がちゃのマップやチケットを持ってきてくれる方が結構いますよ。40代、50代の方もいれば、もっと若い方も多いね。チケットを持ってきてくれた人には、レンタルタオルのサービスをプレゼントしているんだよね。お風呂に入って、「まさかのがちゃで、この癒やし(特典)が選べるのが嬉しい」なんて喜んでくれて。

ふじ:新しいきっかけで、若い世代の方と接点が生まれるのは嬉しいですね。

斉藤さん: 本当に。今の若い人のセンスっていうのはすごいね、ありがたいですよ。ここに来てくれた人が幸せを感じてくれるのが一番ですから。

時代に合わせて「つくり変えていく」銭湯の姿

すえ: 斉藤さんは三代目とのことですが、この場所でずっと街の変化を見てこられたんですよね。

斉藤さん: そうだね。私の父親である二代目が「常に綺麗に、新しく」という考えの人で、時代に合わせて建物を造り替えてきました。昔はお湯しか出ないのが当たり前だったけれど、今はシャワーがあって、設備もどんどん便利になる。時代に合わせた「使いやすさ」を追求してきた歴史なんです。

すえ: まち全体の雰囲気も、昔とはずいぶん変わりましたか?

斉藤さん: 昔は八百屋さん、魚屋さん、お肉屋さん…と商店が軒を連ねていて、夕食の支度で街を歩くのが楽しかった。今はみんなスーパーでしょう? 個性がなくなってきた寂しさはあるけれど、だからこそ銭湯ならではの「家族で来られる味わい」を大事にしたいと思っているんです。

「親父が大変そうだから」から始まった、21歳の決断

すえ:斉藤さんが家業を継がれたのは、自然な流れだったのでしょうか。

斉藤さん: 実は、親から「やりなさい」と言われたことは一度もなかったんですよ。私は日大芸術学部に進んで、自由にやらせてもらっていました。ところが大学2年の時、番頭さんが大きな病気をしてしまってね。

ふじ: それは大変な時期でしたね。

斉藤さん: 親父が一生懸命ひとりで店を回している姿を見ていたら、「親父、大丈夫だよ。自分がやるからいいよ」って自然と口に出ていた。それが21歳の時。卒業する頃には、もう完全に三代目としての覚悟が決まっていました。手伝っているうちに、この仕事から抜け出せなくなっちゃったんだね(笑)。

ふじ:時代に合わせて、銭湯の形も変えてこられたんだとか。

斉藤さん:そうだね。私の父親である二代目が「常に綺麗に、新しく」という考えの人で、時代に合わせて建物を造り替えてきました。私もその背中を見てきたから、二代目、三代目と、それぞれの代で新しい建物を建てて、その時々の「時代に合わせた設備」を取り入れてきたんです。例えば、昔はお湯しか出ないのが当たり前の時代。そこからシャワーが出るようになり、それが今では当たり前になって…。

ふじ:その銭湯の形が、自分にとっての当たり前でした…。今も少しずつ変化し続けているのでしょうね。

斉藤さんの“まちゆきまかせ” -知らない路地ほど、吸い込まれていく。-

ふじ:斉藤さんは、かなり歩かれるとお聞きしました。

斉藤さん: 大好きなんですよ、歩くのが。まちの中をよく歩きます。この地域だったら、もう歩いたことがない道っていうのは、ないぐらいですね。

すえ: 「知らない道はない」と言い切れるのはすごいです…! それでも沢山歩かれるのは、何か理由があるんですか?

斉藤さん: あえてね、細い細い路地を選んで歩くんです。大通りじゃなくて、人が一人通れるかどうかの隙間のような道。谷中銀座の両脇にあるような細い路地も好きでね、そういうところを歩きながら「ああ、やっぱり知らない道はないな」って確認するのが楽しくて。

ふじ:常に「自分の足でまちを確かめる」ことを大切にされているんですね。

斉藤さん: そう。昭和19年生まれで今年80になりますが、毎日2時間、だいたい1万5000歩から、ある時は2万歩くらい歩きます。お散歩の範囲は自宅を中心に360度。三河島から谷中の方まで、上野、浅草、巣鴨……どこへでも行きますよ。今年はシルバーパスも使い始めてね(笑)。

ふじ: 2万歩!それだけ歩く原動力はどこから来るのでしょう。

斉藤さん: 「新しく見たな」とか「初めてだな」という喜びを感じることかな。

実は私の祖父がかつて谷中で「谷中湯」という銭湯をやっていて、私は幼稚園まで谷中にいたんです。昔の地図を見ると、あの辺りは「谷中本村」という地名で、一面の生姜畑だったんですよ。

今じゃ怒られそうだけど、谷中霊園の方まで行って隠れん坊をしたり(笑)

今はもう無い大きな長い階段を上って遊びを見つけたりしたなあ。今の散歩もその延長線上で、どこでも遊び場にしてしまうワクワク感があるんだよね。

ふじ:それが健康の秘訣だし、心の若さにも繋がっているんですね…!

続く理由は、いつも「面白い」の先にある。

すえ: 現在は、四代目である息子さんも手伝われているとか。

斉藤さん: 息子は会社勤めをしながら、中小企業診断士の視点で今の営業スタイルを支えてくれています。休みだと結構手伝ってくれてます。

時代は変わって、全部自分で体洗ってね、自分で帰ってくれるっていうセルフサービスが主流になったけれど、やっぱり最後は「喜んでもらうこと」が一番。

斉藤さん: 仕事も遊びも、辛いと思うと続かない。去年、銭湯組合の旅行で沖縄に行った時は、お風呂のシャワーより強い大雨に打たれてね(笑)。でもそれすらも笑い話にして、「楽しい思い出」に変エられるんだよね。

ふじ: どんな状況も「面白がる」ことが、元気の秘訣なんですね。

斉藤さん: 楽しいことがあれば時間はあっという間だし、自然と頑張れる。今回のマップの取り組みも、まずは自分たちが楽しんで、そしてお客さんに喜んでもらう。それが一番だと信じています。

📍日暮里 斉藤湯

住所:東京都荒川区東日暮里6丁目59−2
SNS:Instagram

💭店長・ふじの一言!
よく行く銭湯で、3ヶ月に一度のレディースデイが最高に楽しいんです。
露天風呂の岩風呂があったり、バラエティ豊かなお湯の種類でずっと入っていられる。
お風呂上がりのミニサイズのビールも最高です!

#まちゆきまかせインタビュー
現在JR日暮里駅コンコースで販売中のよりみちまっぷがちゃ。マップづくりを支えてくれた、谷根千のまちで活躍する8人たちの店主たちへの、インタビューシリーズです。そんな店主たちが、普段どんなふうにこのまちを歩き、どこに心惹かれているのか。彼らの視点から語られる「まちの楽しみ方」をお届けします!

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谷根千ローカルメディアとして、ニッチでコアな谷根千の楽しみ方を記事やイベントを通して発信している。 記事だけでなく、まちの人たちが企画を持ち込み、まち歩きイベントやトークイベントを不定期で開催している。 運営主体:株式会社HAGISO

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