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まちゆきまかせインタビュー│谷中 酒喰 清太郎 山田智之さん

まちゆきまかせインタビュー│谷中 酒喰 清太郎 山田智之さん

「うちは初手で来るにはハードル高いよ(笑)」。

そう笑いながら、手際よくグラスを磨く山ちゃん。24年前、酒販の名店「伊勢五本店」に勤めるためにこの街へやってきた彼は、今や谷中の生き字引の一人。ガチャをきっかけに階段を上がってきた若い世代や、変わりゆく街への眼差しを伺いました。
(聞き手:まちまち眼鏡店 ふじ・すえ)

がちゃが下げた「2階のバー」へのハードル

ふじ: よりみちまっぷがちゃのチケットを持って来られる方、山ちゃんのお店にもいらっしゃいますか?

山ちゃん: 来てるよ。びっくりしたのが、チケットを持ってきた8人のうち3人くらいが外国人だったこと。あとは若いカップル。うちみたいな店は、普段は大体お客さんの紹介で来るから、こうして「新規」の人が来てくれるのはありがたいよね。

すえ: 確かに、看板も控えめですし、入るのに少し勇気が要りますよね。

山ちゃん: そうそう。二階だし、メニュー表も外に置いてないからね。「いくら取られるんだ?」って怖いと思うよ(笑)。でも、よりみちまっぷがあることでそのハードルが少し下がる。

新規のお客さんはお酒にそこまで詳しくない人も多いからこそ、「これ何ですか?」って会話が生まれるのが面白い。変に詳しい人より、真っさらな状態で楽しんでくれる人の方が、うちのお店を味わい尽くせるかもしれないね。

「味見」から始まる、ガチのコミュニケーション

ふじ: 外国人のお客さんとは、どんなやり取りを?

山ちゃん: 扉を開けた瞬間に「ノー・イングリッシュ・メニュー、キャッシュ・オンリー!」って速攻で言うんだけどね(笑)。それでも入ってくる人は「ガチ」だから、味見をしてもらいながら一緒にお酒を選んだりする。こないだのインドネシアとブラジルからのお客さんは、結局3時間くらい飲んで食べて、楽しんでいってくれたよ。

すえ: カウンターでの交流も生まれているんでしょうか。山ちゃん: あるよ! 常連が初対面のお客さんに「え、なんでここに来たの?」って食いついて、もう格好の餌食だよね(笑)。そこから「どんなお店がマップに載ってるの?」って話題が広がって、まち全体のことに興味を持ってくれる。それがこの企画の面白いところだと思う。

山ちゃんの “まちゆきまかせ” -先代への敬意-

ふじ: 山ちゃんがこのまちで、ぜひ行ってほしいと思う場所やお店はありますか?

山ちゃん: 俺はもう、圧倒的に「岡倉天心公園」と「谷中霊園」。特に夜、静かにライトアップされた天心公園の空気は最高だね。飲食店なら、谷中霊園の入口の「筆や」さん。

ここのマスターとママには20年可愛がってもらってるけど、名物の『ビーフシチュー』は絶品だよ。でも、ここに行くなら「早いほうがいい」っていつも言ってるんだ。

ふじ: 早いほうがいい、というのは?

山ちゃん: 今、このまちを支えてきた老舗の「30年オーバー」のお店が、軒並み引退の時期を迎えているんだよね。いつ「今日で終わり」になってもおかしくない。

俺らみたいな、この10年やそこらで新しく店を構えた人間は、正直に言えば、彼らが何十年もかけて作ってくれた「谷中の雰囲気」に乗っかっているだけなんだよ。

すえ: その「乗っかっている」という感覚があるからこそ、古いお店を大切にしたいんですね。

山ちゃん: そう。俺の店だって悪くはないけど(笑)、本当にこの街の根っこを作ってくれたのは、そういう古い飲食店たち。彼らが引退して、店がマンションやチェーン店に変わる前に、その空気をお客さんには肌で感じてほしい。俺は、その「バトン」が今まさに渡されようとしている、ちょうど端境期の世代なんだと思う。

ふじ:ここ数年みているだけでも、入れ替わりの空気は常に感じています。

山ちゃん: 昔に谷中霊園で花見ができたときには、天王寺駐在所に「さくらさん」っていう名物警察官がいたんだよ。彼のおかげで、まちのトラブルを丸く収めてお花見ができていた…、なんて話も、俺らが上の世代から直接聞いてきたこと。俺らが語り継がないと、この街の「本当の面白さ」は消えてしまう。

山ちゃん: 2人がこうして文章にして残してくれるなら、それはただの紹介記事じゃなくて、まちの記憶として残る。俺ら世代は、そうやって上の世代の想いを汲み取って、若い芽に繋ぐ「ブリッジ」なんだよ。俺もここでカウンター越しに、その記憶を伝えていくから。

📍谷中 酒喰 清太郎

住所:東京都台東区谷中3丁目1−3 松村ビル 2階
SNS:https://www.instagram.com/seitaro_yanaka

💭店長・ふじの一言!
本当に気さくな店の山ちゃん。豊富な種類のお酒に迷っても、好みのお酒をズバッと当てて出してくれます。まちの人たちを愛し、愛されている彼が真の谷中のアイドルかも…。負けてられない!

#まちゆきまかせインタビュー
現在JR日暮里駅コンコースで販売中のよりみちまっぷがちゃ。マップづくりを支えてくれた、谷根千のまちで活躍する8人たちの店主たちへの、インタビューシリーズです。そんな店主たちが、普段どんなふうにこの街を歩き、どこに心惹かれているのか。彼らの視点から語られる「まちの楽しみ方」をお届けします!

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hagistudio

谷根千ローカルメディアとして、ニッチでコアな谷根千の楽しみ方を記事やイベントを通して発信している。 記事だけでなく、まちの人たちが企画を持ち込み、まち歩きイベントやトークイベントを不定期で開催している。 運営主体:株式会社HAGISO

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